ヨシムラ
スーパーチャージャースポーツ、ニンジャH2のスポーツツアラーバージョンであるニンジャH2 SXの上級型“SE”に、電子制御サスペンションKECSなどを装備した“SE+”が登場。それは、走りの特性をワイドレンジにしてくれる魅力にあふれていた。
取っ付きのいいままスーパースポーツ感覚へ
1年前にニンジャH2 SX SEに試乗し、本誌でお伝えしたように、扱いやすいスポーツツアラーとしての寛容性に感心したものである。ただ、そのときは極寒強風の悪条件だったこともあり、スポーツバイクとしての魅力には気付かずじまいであった。
なのに、今回のニンジャH2 SX SE+は、このままどこまでも足を伸ばせそうな快適性と余裕のなかで、純粋にスポーツとして楽しむこともできた。1年前にこのことに気付かなかったのは、条件のせいだけなのだろうか。ひょっとすると、“SE+”に装備された電子制御サスペンションKECSの恩恵があるのかもしれない。
取っ付きもよい。身体がリラックスできて巨体になじみ、低速度域でのマシンの取りまわしもやりやすい。サスペンションがしなやかに動き、姿勢変化が絶妙にコントロールされているからなのだろう。
それでいて、コーナーでは車体はシャキッと安定していて、ライダーの荷重コントロールにもしっかりこたえてくれる。スポーツコーナリングを楽しむことができるのだ。
ライディングポジション
サスペンションはベースの部分にしなやかさがあって、乗り手も気負うことなくなじむことができるから、スポーツしようという気にもさせられる。コーナーに入るとサスペンションはしっかり踏んばり、スポーツすることができる。1年前に気付かなかったスポーツ性発見ということだ。
しかも、この電子制御サスペンションは、既存のものとは一線を画したすばらしさである。ストロークセンサーが装備されたショーワ製のそれは、実際にセッティングが制御されるまでの時間が圧倒的に短く、一切のタイムラグを感じない。だから、どこをどのように走っても、最初から最適セッティングがほどこされていたかのようなのである。
それだけではない。サスペンションの電子制御モードをノーマルから、ハードに変更したところ、もうスーパースポーツに近い感覚である。しかも、走り出した瞬間から、キャラクターが変貌したかのようなのである。反応速度の速さゆえだろう。また、ソフトにすると低速で舵角を入れやすく、街乗りバイクみたいに取りまわすことができる。
ネーミングの末尾の“+”には、プラスアルファ程度のニュアンスがあるが、実際にはもっと絶大な意味を感じる。バイクを楽しむ可能性を何倍にも広げてくれるからだ。
2019年型に加わったKECS装備車
スーパーチャージドエンジンと先進装備を搭載したニンジャH2のツアラー仕様ともいえるニンジャH2 SXと、その上級型であるニンジャH2 SX SEが市販されたのが2018年のこと。そして今回、“SE”のさらに上位機種としてニンジャH2 SX SE+が登場した。“SE”の装備に加え、電子制御サスペンションKECS をはじめフロントキャリパーにブレンボのStylema(スタイルマ)を採用するなど、シリーズ中、最も先進性を見せる。
ミラー後方視認性
進化する電制サス
主なスペック
全長×全幅×全高 | 2,135×775×1260(mm) |
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軸間距離 | 1,480mm |
シート高 | 820mm |
車両重量 | 262kg |
エンジン型式・排気量 | 水冷4ストローク DOHC 4バルブ 並列4気筒・998cm3 |
最高出力 | 147kW(200ps)/11,000rpm |
最大トルク | 137.3N・m(14.0kgf・m)/9,500rpm |
燃料タンク容量 | 19ℓ |
タイヤサイズ | (F)120/70-17(R)190/55-17 |
価格 | 277万5,600円(税8%込) |
和歌山 利宏
バイクジャーナリスト。バイクメーカーの元開発ライダーで、メカニズムからライディングまで、自身の経験にもとづいて幅広い知識を持つ。これまでに国内外問わず、車両のインプレッションも数多く行なっている。