ヨシムラ
長距離を走ることで見えてきた素顔
次に目指すはワインディングロード。スポーツライディング好きは大幅に軽量化した新型の運動性能に注目しているはず。個人的にもかなり気になる部分なので、俄然気分が盛り上がってくる。
進入したのは初めて走る峠道。ツーリング先でよくあるシチュエーションである。見通しが効かないカーブに慎重にアプローチ。ブレーキング時によかったのはブレーキレバーのタッチ。にぎり始めの初期段階からディスクをはさむ感じが伝わってくるので、ねらったスピードまで不安なく減速することができる。リリースと同時にフロントフォークの反力を使いバンキング。車体が傾くスピードは早すぎず、遅すぎず。ライダーの意志に忠実な動きは好感が持てる。タイヤの接地感も得られるので、軽くアクセルを開けてトラクションをかけ続けるのも容易。カーブの出口が見えたら徐々にアクセルを開けていく。すると2気筒エンジンの爆発が後輪に伝わり、軽量な車体を想像以上のスピードで押し出していく。すぐに次のカーブが迫る。再び減速するとS字カーブを軽快に切り返し立ち上がる。その俊敏な動きに思わずニヤッとしてしまい、自然にペースが上がる。減速区間の短さと脱出速度の速さを活かすとリッターバイクにも引けを取らない走りができるのだ。いやストリートではこちらの方がアクセルを開けやすいので、爽快度がかなり高いことは保証しよう。
ちょっと気になったのは路面が荒れ気味のところでまれにタタンッ、と前後サスペンションが跳ねるような挙動を見せる場面があったこと。もちろん大きく姿勢を乱すほどではないが、それが解消できればさらによい乗り味になるはずという手ごたえもあった。
峠道を堪能したあとで本日の宿に到着。初日で約500km走ったのだが、ここで懸念していたことが発生した。それはお尻の痛みだ。実は足着きのよさに貢献しているスリムなシートは前に行くほど細くなっている。なんとなくデュアルパーパスにも似た着座感だったので、長距離を走るとどうなのかと、少し気になっていた。ロングツーリング向けの肉厚なハイシートがあればヒザの負担も含め解消すると思うのだが。
1000kmを走り終え、短時間の試乗とは異なる印象をいくつも受けた。とくに印象に残ったのはツウ好みの乗り味を備えたライトウェイトマシンだということ。バイクを思いどおりに走らせられることの満足度はかなり高い。それを体感して以来、街で新型ニンジャ650を見かけると心のなかで「お主、わかっているな」とつぶやいてしまう。
ミラー後方視認性
引き起こし
シート快適性
燃費
高速道路 | 25.7km/ℓ |
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一般道路 | 22.67km/ℓ |
ガソリン満タン航続距離 | 340.1km |
たそがれ度
主なスペック
全長×全幅×全高 | 2,055×740×1,135(mm) |
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軸間距離 | 1,410mm |
シート高 | 790mm |
車両重量 | 193kg |
エンジン | 水冷 4ストロークDOHC 4バルブ並列2気筒・649cm3 |
ボア×ストローク | 83.0×60.0(mm) |
最高出力 | 50kw(68ps)/8,000rpm |
最大トルク | 65N・m(6.6kgf・m)/6,500rpm |
燃料タンク容量 | 15ℓ |
タイヤサイズ | (F)120/70–17(R)160/60–17 |
価格 | 80万7,840円(税8%込)/82万9,440円(KRT Edition・税8%込) |
横田 和彦
1968年6月生まれ。16歳で原付免許を取得。その後中型、限定解除へと進み50ccからリッターバイクまで数多く乗り継ぐ。現在もプライベートで街乗りやツーリングのほか、サーキット走行、草レース参戦を楽しんでいる。