ヨシムラ
どんな道も怖くない! 行動範囲が大きく広がる
走り出しはスムーズの一言。さすが並列2気筒エンジンだ。重心が低いため車体の挙動も安定している。それでいて行きたいと思った方向にはスッとノーズが向く素直さも持ち合わせているので、市街地走行も容易だ。驚くほど軽いクラッチや大きなハンドル切れ角も、混雑した路地を走るときなどに威力を発揮する。
高速道路に乗ると大型シールドの効果を実感する。自分の身長ではヘルメットにわずかに風があたるので風切音がするのだが、少し頭を下げると風切音がしなくなる。高速道路を長距離移動しても、シートの着座面が広いのでお尻が痛くなりにくい。前後サスペンションが路面からの衝撃を的確に吸収してくれることも、乗り心地を高めている理由の一つだろう。エンジンに関しては、高回転域でパンチがあるので追い越しも楽に行なえる。このまま何時間でも走り続けられそうだと感じた。
高速道路を降りてワインディングへ向かう。コーナーの手前でコントロール性が高いディスクブレーキを使い、速度をグッと落とす。リリースと同時に寝かし込むと落ち着いた速度でバンク。タイヤのグリップを感じつつコーナーを立ち上がる。低めの重心が素直なハンドリングを生み出し、深くバンクさせても安定している印象だ。スタンダードより8kg重いツアラーも、バランスがいいため、車体が不自然な挙動を起こすことなくコーナリングできる。
ワインディングの途中で林道を見つけた。こんなとき躊躇することなく入っていけるのがアドベンチャーモデルのいいところ。低速で粘るエンジンはジャリ道でも扱いやすく、軽くアクセルを開けてもリヤタイヤはグリップしてすべりにくい。ABSが装備されているのでトリッキーな走りはできないが、誰でも気負わずにダートを走れると感じた。
高速道路、ワインディング、ダートを一日走って感じたのは、このモデルは自然体でさまざまなフィールドをこなしていくバイクだということ。エンジンもハンドリングも突出したところがなく至ってニュートラル。それがストレスのない走りを実現している。普段は通勤に、週末は峠や林道に。街のカフェに乗り付けてもいい。オールラウンドな使い方ができる、可能性に満ちたバイクだ。
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吉友 寿夫
1981年から全日本モトクロスに参戦し、翌年国際A級に昇格。その後ラリー、エンデューロなど数多くのオフロード競技にエントリーし結果を残している。多くの経験と実績を元にした的確な洞察力には高い評価がある