ヨシムラ
W800は、カワサキ創成期の1960〜70年代に一世を風靡したW1をモチーフとしたモデルだ。現在の高回転型エンジンにない鼓動感が期待されるだけに、ここにカワサキはビッグバーチカルツインを新設計した。
今日的なビッグレトロツイン
昔ながらのビッグツインの味わいを、そのまま現在において求めるのは無理がある。厳しくなる騒音、排ガス規制に合致させるため、昔の排気音やトルク変動の激しさは許されないのだ。
ましてや、道路事情は半世紀前とは違い、高速での移動が可能になっている。昔なら鼓動感として持てはやされた振動の類も、今ではライダーに苦痛を与え、車体の耐久強度に悪影響を与えてしまう。
そのせいもあって、バランサー軸が装備されたW800は、360度クランクの鼓動を奏でるも、至ってスムーズだ。乗りやすく、気負わずにレトロフィーリングを楽しめるバイクとなっている。
さらに、インジェクションを採用しているため、燃料供給が完璧にこなされ、常にエンジンは理想状態で回っている。スライドピストン式キャブのW1のように、右手にピストンの上下動を感じ、スロットルワークしていた難しさがない代わりに、マニアックなおもしろさは失せてしまっている。
それでも、中回転域でハンドルグリップにエンジンから伝わる鼓動が、健気にビッグツインらしさを主張。そして、最高出力48psは、十分にして過剰感もなく、平常心で日常生活に溶け込めて、そこにはレトロフィーリングがある。
伝統と現状の折衝点が追及されているということだ。
スペック一覧
車名(通称名) | W800 | |
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マーケットコード | EJ800AGF/EJ800AGFA(Special Edition) | |
型式 | EBL-EJ800A | |
全長x全幅x全高 | 2,180mm×790mm×1,075mm | |
軸間距離 | 1,465mm | |
最低地上高 | 125mm | |
シート高 | 790mm | |
キャスター/トレール | 27°/108mm | |
エンジン種類/弁方式 | 空冷4ストローク並列2気筒/SOHC4バルブ | |
総排気量 | 773cm3 | |
内径x行程/圧縮比 | 77.0mm×83.0mm/8.4:1 | |
最高出力 | 35kW(48PS)/6,500rpm | |
最大トルク | 62N・m(6.3kgf・m)/2,500rpm | |
始動方式 | セルフスターター | |
点火方式 | バッテリ&コイル(トランジスタ点火) | |
潤滑方式 | ウェットサンプ | |
エンジンオイル容量 | 3.2L | |
燃料供給方式 | フューエルインジェクション | |
トランスミッション形式 | 常噛5段リターン | |
クラッチ形式 | 湿式多板 | |
ギヤ・レシオ | 1速 | 2.352(40/17) |
2速 | 1.590(35/22) | |
3速 | 1.240(31/25) | |
4速 | 1.000(28/28) | |
5速 | 0.851(23/27) | |
一次減速比/二次減速比 | 2.095(88/42)/2.466(37/15) | |
フレーム形式 | ダブルクレードル | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック(インナーチューブ径 39mm) |
後 | スイングアーム | |
ホイールトラベル | 前 | 130mm |
後 | 106mm | |
タイヤサイズ | 前 | 100/90-19M/C 57H |
後 | 130/80-18M/C 66H | |
ホイールサイズ | 前 | 19×2.15 |
後 | 18M/C×MT2.75 | |
ブレーキ形式 | 前 | シングルディスク300mm(外径) |
後 | ドラム(リーディング・トレーリング)160mm(内径) | |
ステアリングアングル (左/右) | 37°/37° | |
車両重量 | 216kg | |
使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン | |
燃料タンク容量 | 14L | |
乗車定員 | 2名 | |
定地燃費(2名乗車時) | 33km/L(60km/h・国土交通省届出値) | |
最小回転半径 | 2.7m | |
カラー | メタリックオーシャンブルー×パールアルパインホワイト(BLU) | |
メーカー希望小売価格 | 87万4,800円(税込・当時) Special Edition:90万6,120円(税込・当時) |
和歌山 利宏
バイクジャーナリスト。バイクメーカーの元開発ライダーで、メカニズムからライディングまで、自身の経験にもとづいて幅広い知識を持つ。これまでに国内外問わず、車両のインプレッションも数多く行なっている。