ヨシムラ
1997年式ZRX1100は、ZRX1200ダエグのルーツに当たるモデルである。20年近くを経ても、ZRXに作り込まれたワイルドなスポーティさは健在である。
男らしいワイルドさはダエグよりも上手か
1989年に登場したゼファーがネイキッドブームの火を点け、1992年にはゼファー1100も登場した。それらクラシカルネイキッドとは対照的なスポーツネイキッドであるZRX1100は、1997年に初登場する。1984年のGPZ900Rをルーツに持つエンジンを、ダブルクレードルフレームに搭載。車体をコンパクトにパッケージングし、前後サスペンションにフルアジャスタブル式のものを採用するなど、スポーティさを前面に押し出したモデルであった。
ZRX1100は、2001年に1200へと排気量アップされ、2009年にはZRX1200ダエグ(以下、ダエグ)へと発展してきた。基本を受け継ぐとはいえ、改良は随所におよび、僕自身、その進化を体験してきたわけだが、今、初期型に乗って何を思うのか大変に興味があった。
その第一印象をひと言で言うなら、ダエグをガサツで無骨にした感じとしていいかもしれない。ダエグには20年分の技術の進歩を感じるも、基本的な持ち味は引き継がれているというわけだ。
ダエグと比べてしまうと、ドテッとした重さがあり、リヤショックの動きにも古さを感じる。ただ、思い出すと、このZRX1100はコーナーの立ち上がりでリヤが細かく跳ねることもあったが、今回の車両にはそれはない。吸収性に富むミシュランのパイロットロードⅡが装着されているおかげかもしれない。
スロットルレスポンスも、なつかしいキャブレターらしい人間味あふれるのどかな味わいがあって、ホッとさせられる。このZRX1100とて、キャブレターはスロットル開度センサー付きなのだから、いかに今の洗練されたものに慣れきっているか思い知らされる。
しかし、このZRX1100に作り込まれたスポーティさは、色あせていない。バンク角は十分に深く、コーナリング性能は今のものと比較しても申し分ないし、低中速コーナーでは光ったものを感じさせる。それでいて、マシンが旋回性をひけらかすようなことはなく、ライダーへの依存度が高いハンドリングだ。
そしてエンジンは、低回転域がスムーズでトルクも太く、そのまま6,000rpmのトルクピークまで、リニアに伸びていく感覚が味わえる。取っ付きのよさがある一方で、男らしいワイルドな魅力もあるのだ。
主なスペック
車名 | ZRX1100 |
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型式 | ZR1100C |
全長×全幅×全高 | 2,120×780×1,150(mm) |
軸間距離 | 1,450mm |
シート高 | 790mm |
乾燥重量 | 222kg |
エンジン | 水冷4ストロークDOHC 4バルブ並列4気筒・1,052cm3 |
ボア×ストローク | 76.0×58.0(mm) |
最高出力 | 73.6kw(100ps)/8,500rpm |
最大トルク | 96.1N・m(9.8kgf・m)/6,000rpm |
燃料タンク容量 | 20ℓ |
タイヤサイズ | (F)120/70-17(R)170/60-17 |
価格 | 94万円(当時) |
和歌山 利宏
バイクジャーナリスト。バイクメーカーの元開発ライダーで、メカニズムからライディングまで、自身の経験にもとづいて幅広い知識を持つ。これまでに国内外問わず、車両のインプレッションも数多く行なっている。