ヨシムラ
ハードコアなカワサキイメージを実現させた、Z1000の初代が登場したのは2003年。以降、3〜4年毎に大きくモデルチャンジし、スパルタンさと寛容性を高次元化させてきた。今回インプレッションする4代目はその集大成とも思える見事さだ。
今のカワサキらしさを如実に物語るスーパーネイキッド
今回のネイキッド企画において、年代の古いバリオス、ZRX1100、Z1000の順に試乗。最後にこのZ1000に乗った時は、思わずヘルメットのなかで口からこぼれた言葉は「やっぱり、新しいバイクは最高や!」であった。…と言ってしまうと元も子もないが、とにかくZ1000は実によくできたバイクなのである。
思い出すと、私はこのカワサキバイクマガジンでこの4代目Z1000に過去2回試乗している。最初は、登場間もない2014年、雨の都内での初試乗だ。ひどい雨という悪条件下でも、快適で扱いやすい優等生ぶりが印象的であった。
2回目は、タイトで起伏に富んだカーブが続くワインディングでの試乗だ。この時の試乗でZ1000に対する印象は一変した。シャープでキビキビとしたスポーティさで、コーナーでの自由度が高く、また意のままにダッシュできる動力性能のおかげで、心底楽しめたのである。
1度目は扱いやすさに、2度目にはスポーティさに気が付いたZ1000。そして今回の3度目はサーキットでの試乗である。するとなんと、これまでにない一面が見えてきたではないか。サーキットという環境で、そのアグレッシブさに気が付くことになったのである。
ハンドルバーは低めでワイドに開いており、今のスーパースポーツをファイター風にアレンジした感じ。そんなライディングポジションがマッチングするほど、走りもアグレッシブだ。
お断りしておくが、トガっているわけじゃない。エンジンもハンドリングもスムーズで過渡特性にすぐれるからこそ、アグレッシブな領域に攻め込む気にさせてくれるのだ。
エンジンは8,000〜10,000rpmのピーク域がエキサイティングでスーパースポーツ的でもあるが、その性能を活かせるように、ハンドリングやブレーキがサポートしてくれる。前後サスペンションは、攻め込めばしっかり踏んばりながらも、日常域での快適性を犠牲にしていない。
つまるところ、今回の3度目の試乗にして、初めてZ1000のカワサキらしい男気を思い知らされたといったところだ。でも、能ある鷹は爪を隠すと言わんばかりに、必要のないところではそのことをおくびにも出さないところが、今のカワサキ車の実力なのかもしれない。多くの人が楽しめるバイクでもあるのだ。
主なスペック
車名 | Z1000(2016年モデル) |
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型式 | ZR1000F |
全長×全幅×全高 | 2,045×790×1,055(mm) |
軸間距離 | 1,435mm |
シート高 | 815mm |
車両重量 | 220kg |
エンジン型式 | 水冷4ストローク DOHC 4バルブ 並列4気筒 |
排気量 | 1,043cm3 |
ボア×ストローク | 77.0×56.0(mm) |
最高出力 | 101kW(137ps)/9,800rpm |
最大トルク | 109N・m(11kgf・m)/7,300rpm |
燃料タンク容量 | 17ℓ |
タイヤサイズ | (F)120/70-17・(R)190/50-17 |
価格 | 119万8,800円(税込・ブライト調べ) |
和歌山 利宏
バイクジャーナリスト。バイクメーカーの元開発ライダーで、メカニズムからライディングまで、自身の経験にもとづいて幅広い知識を持つ。これまでに国内外問わず、車両のインプレッションも数多く行なっている。