ページを共有

ヨシムラ

「おっと、あぶねぇ」ライダーの不意をつく強烈な加速

1969 500SS マッハⅢ インプレッション

このピーキーなエンジンと相反するように、ハンドルは高くて幅広。しかもフロントホイールが19インチのため、自然とリヤに荷重がかかる。とはいっても、フロント荷重でクイックにコーナーを抜けるような車両でもないので、こういったディメンションでもうなずける。それに、このディメンションは1970年代前後の車両によく見られる傾向。いかにも“バイク”といったイメージで、僕自身もキライではない。

ただ、ちょっと注意したいのがアクセルを開けたとき。上体の起きたポジションとリヤ荷重の車体が積んでいるのは、パワーバンドで一気に吹け上がるエンジン。加速しているときなど、不意にフロントが浮き上がるなんてことにもなりかねない。おそらく高出力のエンジンに慣れていなかったであろう発売当時の一般ユーザーのなかには、「おっと、あぶねぇ」なんて不意をつかれることもあったんじゃないだろうか。

このディメンションだから、コーナリングは弱アンダーステアの傾向にある。では、ねじ伏せればいいかというと、車体設計がそれを許さない。単純に寝かせるだけならライダーの技量一つでどうにでもなるが、バンク角があまりに小さい。右コーナーこそパワーバンドに入れれば、ある程度は寝かし込みながらスムーズに旋回できるが、左コーナーではサイドスタンドがすぐ接地してしまうのでバンク角を稼ぐことができない。でも、よく考えてもらいたい。マッハⅢが発売された年は1969年。今ほど道路の路面状態はよくなく、未舗装の道路も多かったハズ。それにタイヤのグリップ力も低いので、極端なまでのバンク角は要求されなかったのかもしれない。

だからフレームの剛性も妥当なライン。これをむやみやたらに固くしたりすれば、キックバックを起こして逆に接地感が薄れてしまう。たしかにフレーム単体で考えれば剛性は低い。しかし、ディメンションやタイヤのグリップ力、はては発売当時の道路事情を考えれば、それはネガな部分として挙げづらいところだ。

逆にフレームの剛性が云々ということよりも、今のミドルクラスと比較してもそん色ない最高出力と、パワーバンドに入ったときに強烈な加速力を見せるエンジン。このマシン特性を持った車両が、1960年代、しかも街中にドンッと出現したことの方を驚こう。少しぐらい雑な部分があっても、光り輝く存在感が大切。その輝くマシンをライダーが乗りこなせばいい。マッハⅢに乗っていると、そう感じざるを得ない。

主なスペック一覧

型式 H1
全長×全幅×全高 2,095×840×1,080(mm)
軸間距離 1,400mm
乾燥重量 174kg
エンジン 空冷2ストローク並列3気筒・498cc
ボア×ストローク 60.0×58.8(mm)
最高出力 60ps/7,500rpm
最大トルク 5.85kg-m/7,000rpm
燃料タンク容量 15ℓ
タイヤサイズ (F)3.25-19 (R)4.00-18



人気記事




カワサキイチバン