ヨシムラ
水冷化の幕開けとなったニンジャから20年。その間、カワサキが育んだモデルたちはどのような進化を遂げたのか?ここでは代表的なスーパースポーツ車に的を絞り、あらためてその素性を探った。
すべてがプロスペック。乗り手を選ぶ硬派なマシン
次世代の世界最速モデルとして送り出されたZX-12Rは初代モデルより幾度となく試乗しているが、モデルチェンジが敢行されたこのB型も、結論からいうならば、乗り手を選ぶ気高いキャラクターは変わっていない。
ZX-12Rに乗るとまず感じるのは、やたらにハンドルが近いということ。コンパクトにまとめ上げる方向で造られていることがわかる設定だ。そんなわけで乗車姿勢もコンパクト感が際立っているのだが、これは体格の大きい外国人にはきついポジションかもしれない。ただ、それによって想像されるフロント荷重の、いわゆる前乗りポジションなのかというと、ハンドルが手前にあるだけで、従来のカワサキ車に多かった“絶対前荷重”のモデルでもない。そんな感触に最初は戸惑うが、これはライダー側の慣れの範囲で対処できる程度の問題だ。実際のハンドリングも自然と操舵角がつくタイプで、とくに変なクセらしい感触はない。
ただし、改良という観点では初代モデルより足まわりは格段によくなっているはずだが、今回のライディングでは試乗車がまだ新しく、サスペンションも最初の部分しか使われていない、俗にいうアタリが出ていない状態だったのは残念だった。撮影を行なったワインディングも路面が荒れていて、タイトなコーナーレイアウトだったのを差し引いても、本来の持ち味を堪能するまでには至らなかった。だが、旋回性能にしてもパフォーマンスとしてはすごく高いレベルにあることはまちがいない。サスペンションがよく動くようになって中間Gを受け止める姿勢で乗れるとしたら、そこからサスが戻る部分もすべてストロークになっていくわけで、過去に旧型を試乗した経験からいえば、もっといい味が出たと思う。欲をいえばサーキットのような路面のきれいなところで実力を発揮させてみたかった。高く設定されたシートポジションといい、やはりこのバイクのスピードレンジは絶対的にもっと高いところにあると思うからだ。
エンジンの吹け上がりという点では、インジェクションのフィーリングがさらに進化した感じだ。低回転から全開まできれいに吹け上がるようなセッティングの絶妙さを感じることができる。どこか唐突にドン突きがくることもないし、アクセルを開けたままパワーがついてくる間のタイムラグを待つなんていうこともない。あっさりし過ぎな感想かもしれないが、「全然悪くない」という印象なのだ。それに加え、シフト操作のフィーリングも、同時に試乗したGPZ900RやZZR1100、ZX-9Rと比べて一番スムーズだった。このへんは時代が育んだ進化の部分なのではなかろうか。
細かい部分を挙げていくといい部分もたくさんあるが、12Rのよさを総じるなら、まず「いい部品の集合体」であるということ。やはりスピードやパフォーマンスの次元が高くなるほど、ちょっとした遊びや誤差が気になってくるからだ。フリクションロスをひとつなくすにしても非常に高い精度で造られていることがわかるし、そのぶんそれが、12Rで走る優越感につながっていると思う。乗り手に満足を与えるという意味ではダントツ。ラインナップの位置づけとしてもカワサキの中で一番頂点にあるモデル(当時)というのは、乗るだけでわかるものだ。そんな気高さはZ1以来の伝統なのだろうし、フラッグシップたるゆえんなのだろう。
ZX-12R(B2) スペック一覧
型式 | ZX1200B |
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全長×全幅×全高 | 2,085×740×1,200mm |
ホイールベース | 1,450mm |
最低地上高 | 120mm |
シート高 | 800mm |
乾燥重量 | 210kg |
エンジン | 水冷4ストロークDOHC並列4気筒4バルブ・1,199cc |
ボア×ストローク/圧縮比 | 83.0×55.4mm/12.2 |
最高出力 | 178ps/9,500rpm(ラムエア加圧時190ps/10,500rpm) |
最大トルク | 13.7kg-m/7,500rpm |
燃料タンク容量 | 19ℓ |
変速機 | 常噛6速リターン |
キャスター/トレール | 23.5°/98mm |
ブレーキ/F | ダブルディスクφ320mm |
ブレーキ/R | シングルディスクφ230mm |
タイヤサイズ/F | 120/70ZR17 |
タイヤサイズ/R | 200/50ZR17 |
※掲載時から一部表現を修正しています
※撮影車はZX1200B2