ヨシムラ
水冷化の幕開けとなったニンジャから20年。その間、カワサキが育んだモデルたちはどのような進化を遂げたのか?ここでは代表的なスーパースポーツ車に的を絞り、あらためてその素性を探った。
スポーツマインドをくすぐるコーナリング性能が身上だ
Zの血統を受け継ぐ900cc最強のスーパースポーツとしてデビューしたZX-9Rは、レーサーレプリカZXR750とZZR1100の間を埋める軽量・コンパクト性に優れた新時代のモデルだった。コーナリング性能に特化したリッター前後のスーパースポーツモデルは、今でこそ各社そろいぶみの感はあるが、デビューの1994年当時には、その先鞭ともいえるホンダCBR900RRが最大のライバルだった。そこで9Rに与えられたスペックは乾燥重量215kg、最高出力139psというクラストップのパワーを誇るものであった。
かつてレースで使っていたC型をはじめ歴代9Rを試乗してきた経験からいうと、今回の撮影車である初代B型はフロントフォークに倒立式を採用しているせいで、全体的にもっともカッチリしている印象をうける。コーナリング時のギャップの通過でもシャキっとした感じで、のちのC型以降で改良されていったしなやかさの方向性とは異なっていることがわかる。ただ、剛性志向ばかりでガチガチというわけではなく、それはあくまでも比べてみたときの印象なのだが…。
9Rはコーナリング性能のみならず高速クルージングでの快適性も考慮したオールラウンドな設計がなされているようだが、やはりその身上は峠やサーキットランといった“攻め”の走りになるだろう。
たとえば、まずエンジンの吹け上がり。オールラウンド的な部分からするとZZR1100あたりも視野に入ってくると思うが、こと加速に関していえば、スロットルオンの短い距離でも鋭さがある。もっと攻めさせようとしているような、いきいきしたレスポンスを感じさせるものになっている。それでいて、今回試乗したようなタイトなワインディングで一番多用すると思われる2速だと、5,000〜6,000回転ぐらいからでも楽しめるパワーが発揮される設定なのは、親しみのわくワイドレンジな吹け上がりだということができる。
ハンドリングはキャスターを立てて、クイックさを狙った設定が、よく現れている。コーナーへ進入していくと、タイヤの位置がハンドルの真下からエンジンの少し手前にある感覚。そして、コーナーのイン側へマシンをひねり込んでいくような、舵角のつくハンドリング特性をもっている。これを殺さずに慣らしていくのが、9Rを操るうえでのポイントになるだろう。テクニックとしては、コーナーへの進入でフロントサスをしっかり沈めてやらないと、ずっとキャスターが立ったままになってしまい、ハンドリングの一番ニュートラルな部分が出にくい。つまり前輪に荷重を乗せて速度を上げていくことで、自分の行きたい方向へ向こうとする舵角と一致するところが必ず出てくるはず。それが9Rの舵角をコントロールすることであり、乗りこなす秘訣にもなるのだ。それは、自分のテクニックが上達すればするほどおもしろ味が出ているキャラクターとも合致していると思う。
ツーリングモデルとも違う、バリバリのレーサーレプリカとも違う。走りの満足度ということから考えると、やはりZX-9Rはワインディングやスポーツライディングを楽しむうえでベストなバランス感覚をもっているモデルだと位置づけられるだろう。
ZX-9R(B1) スペック一覧
型式 | ZX900B |
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全長×全幅×全高 | 2,085×725×1,165mm |
ホイールベース | 1,440mm |
最低地上高 | 125mm |
シート高 | 800mm |
乾燥重量 | 215kg |
エンジン | 水冷4ストロークDOHC並列4気筒4バルブ・899cc |
ボア×ストローク/圧縮比 | 73.0×53.7mm/11.5 |
最高出力 | 139ps/10,500rpm |
最大トルク | 9.8kg-m/9,000rpm |
燃料タンク容量 | 20ℓ |
変速機 | 常噛6速リターン |
キャスター/トレール | 24°/93mm |
ブレーキ/F | ダブルディスクφ320mm |
ブレーキ/R | シングルディスクφ230mm |
タイヤサイズ/F | 120/70ZR17 |
タイヤサイズ/R | 180/55ZR17 |
※掲載時から一部表現を修正しています
※撮影車はZX900B1