ヨシムラ
水冷化の幕開けとなったニンジャから20年。その間、カワサキが育んだモデルたちはどのような進化を遂げたのか?ここでは代表的なスーパースポーツ車に的を絞り、あらためてその素性を探った。
意外や意外! 直線だけの巡航マシンではない
ニンジャもそうであったが、カワサキのフラッグシップモデルはZ1の登場以来、世界最速・最強であり続けている。かつて9年もの長い間、世界の頂点に君臨し続けたZZR1100もまた、“最速”を使命としたモデルであったことはご存じのとおりだ。
最強のエアマネージメントをほこるフルカウルフォルムから想起される走りは、完璧なウインドプロテクションに包まれた上質なハイスピードクルージングであろう。ZZRには、やはりそれが似合うし、アウトバーンのようなシチュエーションなら、200km/hからでも余裕で加速していくポテンシャルを味わうのがこのうえなく楽しい。個人的(ライダー・塚本)な話になるが、初めてZZRに試乗したのはまだ開発中のころ、ワークスマシンのテストで谷田部の高速周回路に来ていたときのこと。いきなり280km/h以上が出て、メーター読みだったら確実に300km/hはいくだろう、本当にすごい市販車を作ったなと思ったのを記憶している。しかし、ただの直線番長かと思いきや、今回の試乗で驚かされたのは、ワインディングステージでのZZRの運動性能だった。
ZZRのキャラクターに合わせた設定がなされているため、サスペンションはワインディングユースではやや柔らかい気はするものの、フロントの接地感がすごくあり、荷重がかかっているときにしっかりと受け止めている安心感につながっている。つまり、ワインディングでも不安なく、高いレンジで攻められるモデルなのだ。
車重はこの手のモデルだけにかなり重いのだが、逆にいうとフロントへ荷重がかかりやすい設定になっており、バンキングさせたときの不安感はなく、またハンドリングに変なクセも出ない。コーナリングの一連の動きで察するに、ブレーキも効き、サスもよく仕事をしてタイヤがそれをしっかりカバーしてくれている。やっぱり、そのバランスがよくとれているのかな、と感じさせるのだ。
実際、身体を前にかぶせて積極的にフロントに荷重を乗せてライディングするほうが、コーナリングの楽しさを味わえるだろう。ただし、強いて言うならば、つなぎ目やギャップが多く、サスにかかっている荷重が抜けたりするような路面だと、寝かせているマシンがヨレるような感じになって怖い思いをすることがあるから注意が必要だ。
また、さすがに1,100ccの排気量とトップパフォーマンスを与えられたエンジンだけあってよく回り、パワーもあるから、それが旋回性能の向上にもつながっている。
そのエンジンの吹け上がりだが、低速トルクもそこそこあり、5,000回転前後もあれば余裕で吹け上がっていく。また、車重のハンデを解消するだけの十分なパワーを備えている。加速の際にパワーを引き出すためのタイムラグがなく、パンチ力もある。このへんはツインラムエアになったD型ではさらに煮詰められて、ターボが効いているようにグッと回転数が上がっていくフィーリングを体感できるのだけど、この初代C型もなかなかどうして147psはダテではない。
結果的には、大きく重いはずの車体から受ける印象からはワインディングには不向きかと思えるが、さにあらず。ZZRのこんなところにも秘められたポテンシャルを感じずにはいられなかった。これは、さすが高バランスで調教された懐の深さだといえるだろう。
ZZR1100(C1) スペック一覧
型式 | ZX1100C |
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全長×全幅×全高 | 2,165×720×1,210mm |
ホイールベース | 1,480mm |
最低地上高 | 110mm |
シート高 | 780mm |
乾燥重量 | 228kg |
エンジン | 水冷4ストロークDOHC並列4気筒4バルブ・1,052cc |
ボア×ストローク/圧縮比 | 76.0×58.0mm/11.0 |
最高出力 | 147ps(108kW)/10,500rpm |
最大トルク | 11.2kg-m(110Nm)/8,500rpm |
燃料タンク容量 | 21ℓ |
変速機 | 常噛6速リターン |
キャスター/トレール | 26°/113mm |
ブレーキ/F | ダブルディスクφ310mm |
ブレーキ/R | シングルディスクφ250mm |
タイヤサイズ/F | 120/70VR17 |
タイヤサイズ/R | 170/60VR17 |
※掲載時から一部表現を修正しています
※撮影車はZX1100C1欧州仕様