ヨシムラ
水冷化の幕開けとなったニンジャから20年。その間、カワサキが育んだモデルたちはどのような進化を遂げたのか?ここでは代表的なスーパースポーツ車に的を絞り、あらためてその素性を探った。
基本設計の古さは否めないがニュートラルな運動性能が光る
GPZ900Rは、1984年のデビュー以来、本当に長い間、現行機種のラインナップに名を連ねていたが、ついに2003年の6月で生産終了になることが決定した。ファイナルエディションと呼ばれる最終型A16が、ようやく市場にもデリバリーされ始め、有終の美を飾ろうとしている。
試乗車はその最終型と同じ装備内容をもつフルパワーの輸出仕様だったが、まず感じたのは30年以上も前のバイクだということと、意外と乗りやすいことに驚かされたことだった。
その昔、サーキットでガチガチのレーサーに一度乗って以来、「こんな鉄の塊が人気あるなんて理解できない」と、正直、今までニンジャにいい思いをいだいたことがなかったのだが、今回初めて公道で乗ってみて見直す結果となった。だいたい乗り始めはバイクとの距離感やハンドリング特性を確認しつつ、慣らしがてら流したりするのだが、その必要がまったくなかった。思いどおりにバイク自身が走ってくれるので、いきなりガンガン走れてしまうほどだった。ハンドリングにもクセらしきものは感じられない。
ただ、やはりというべきか、ここしばらくのリッターオーバーの最新ハイパワーモデルと比べると、900ccのキャパシティではどうしてもエンジンの吹け上がりに非力さを感じてしまう。とくに低速域が今ひとつ。車体が重いことも起因していると思うが、アクセルを開けても重さに負けているというか、前へ出ていくような押し出し感が希薄なのだ。アクセレーションにも加速するのを待つようなタイムラグを、ひんぴんに痛感させられてしまった。このへんの素性には、さすがに時代を感じずにいられない…と、書くべきか。逆にいうならば、チューニングベースとして人気のあることが、よくわかるモデルだ。
話を元に戻すが、先に「乗りやすい」と記した。今回試乗したワインディングは路面の悪い、どちらかというとタイトなコーナーばかりが続くステージだったのだが、これはあくまでその試乗コースと、そこでのランニングスピードのレベルでの話だということだ。つまり、たとえばそれよりも路面のきれいな広いコーナーの峠道や、あるいは究極としてサーキットへ持ち込んだ場合には、ライダーの要求を満たす性能に不満を感じてしまうかもしれない。そういう意味での乗りにくさが、もしかしたら生まれてしまう可能性は悲しいかな、あると想像できる。
余談だが、乗車体験はないものの、初期型はフロントに16インチホイールを履いていたという。そこで仮想インプレを想像してみるならば、現行の17インチラジアルであれだけニュートラルなハンドリングを実現しているのだから、そこへもし16インチタイヤを付けたとしたら当然荷重は前へ入ってしまう。今ほどフロントサスが、初期の段階からいい動きをしたかというと、ちょっと疑問だ。しかもフロント荷重をかければかけるほど、小径タイヤに対して舵角もつくようになるから、さぞ乗りにくかったのではと思われる。絶対的に17インチのほうに分があることは容易に理解できよう。
それはさておき、大柄で古めかしいボディからは想像のつかない親しみやすさを感じられたのは収穫だった。
GPZ900R(A13) スペック一覧
型式 | ZX900A |
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全長×全幅×全高 | 2,220×740×1,220mm |
ホイールベース | 1,500mm |
最低地上高 | 140mm |
シート高 | 790mm |
乾燥重量 | 234kg |
エンジン | 水冷4ストロークDOHC並列4気筒4バルブ・908cc |
ボア×ストローク/圧縮比 | 72.5×55.0mm/11.0 |
最高出力 | 108ps(79kW)/9,500rpm |
最大トルク | 8.5kg-m(83Nm)/8,500rpm |
燃料タンク容量 | 22ℓ |
変速機 | 常噛6速リターン |
キャスター/トレール | 29°/118mm |
ブレーキ/F | ダブルディスクφ300mm |
ブレーキ/R | シングルディスクφ250mm |
タイヤサイズ/F | 120/70ZR17 |
タイヤサイズ/R | 150/70ZR18 |
※日付に関する部分など、掲載時から一部表現を修正しています
※撮影車はA13マレーシア仕様