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ヨシムラ

驚くべきスーパーチャージャーの進化

ニンジャH2SXに乗る機会がいよいよやって来た。俺はフルカウルスポーツツアラーが好きでたまらない。それだけに、ニンジャH2SXの試乗は待ちに待った瞬間なのだ。

昨年の話になるが、ニンジャH2SXが発表された時、俺は、ニンジャH2の装備を豪華にしたニンジャH2ツーリングエディションのようなイメージを持った。しかし、昨年11月に展示車にまたがって「おや? これは違うぞ」と感じ、そして今回試乗して、ニンジャH2SXとニンジャH2は、モデル名こそ似ているが全く別モノだと感じた。

その違いは、アイドリングからスロットルをわずかにひねって走り出した瞬間にわかる。低回転での、スロットルワークに対するエンジンの反応が、とにかく柔らかい。といっても、マイルドというわけでない。感覚としては、スロットル操作とエンジンの反応が強いゴムで結ばれているかのように、ジワッとしつつも芯のある反応をするのだ。3000rpm以下の回転数でも、ギクシャクすることなく粘り強くエンジンは回る。これに対して、ひとたびスロットルを大きくひねれば、自分が想像するビッグバイクの加速力をひと回りもふた回りも超える強烈な加速力を見せる。低回転と高回転はまるで別モノだ。

カワサキは、ニンジャH2Rを発表した2014年に次のようなコメントを残している。

「制御しにくいジャジャ馬を馴らすことから、サラブレッド、それを誰しも乗りこなせること、すなわち『高性能なマシンを自在に操り、ライディングを楽しむ』ことに価値の転換がある」

俺は、ニンジャH2SXで走り出した瞬間、このフレーズが頭に浮かんだ。あまりの扱いやすさに、ひょっとして、俺でも乗りこなせるんじゃないかと。だが、スロットルを大きくひねると、その過激さに、コイツを乗りこなすのはとてもでないが一般ライダーでは無理な話と、その考えを改めた。

シチューションに適した性能を発揮し、ライディングを楽しむことができるスポーツツアラー

では、ニンジャH2SXは、一般ライダーがスポーツ走行しようとすると、手におえないシロモノなのか。いや、そんなことはない。むしろその逆だ。ニンジャH2 SXが高性能な点は、自分に合ったレベルのライディングで、高性能っぷりを楽しむことができることだ。おそらく大抵の一般ライダーは、ハイパワーモデルや高性能バイクに乗ると、持て余してる感を覚えてしまうのではなかろうか。でも、ニンジャH2SXではその感覚がない。ライディングポジションやエンジンフィーリング、ギアチェンジなど、バイクが妙に体になじむ。だからコーナリングでも意気込むことなく、やや頑張るコーナリングを成功しやすい。

バイク乗りにとって壮快な気分を味わえる時が、頑張ってコーナリングを成功させた時、「おっ、今の俺、イケてたんじゃね」と思う瞬間だ。ニンジャH2SXでは、自分のレベルなりに、この気分を存分に味わえる。しかも、乗っているバイクがスーパーチャージャー付きの最新モデルとなれば、なおさらコーナリングの満足度は高い。

実はこれがニンジャH2SXのもっともすぐれている点だと思う。機能は最先端なモノばかりで、スーパーチャージドエンジンという過激なエンジンが採用され、最高出力は200ps。この強烈極まりない性能をひけらかすことなく、いざという時には存分に発揮し、扱い方によっては潜める。

だからツーリングに最適なのだ。市街地を抜け高速道路を走り、ワイディングを楽しむ。ニンジャH2SXは、それぞれのシチューションに適した性能を発揮し、それぞれのシチュエーションでのライディングを楽しむことができる。まさにスポーツツアラーそのものなのだ。

驚くべきは走行性能だけでない。価格にも注目してほしい。これだけの性能を引っさげているのにもかかわらず、スタンダードモデルでは199万8,000円、SEでは237万6,000円と、お手ごろとはいえないものの、超高額にならないように抑えている。一般的にニンジャH2は、価格からして雲の上の存在だ。でもニンジャH2 SXは、頑張れば買える範疇にあると思う。

ライディングポジション

アップタイプのセパレートハンドルを採用していることと、シートも幅が広く前につんのめらない形状になっているので、ライディングポジションは、ツアラー寄りになっている。
Ninja H2 SX SE ライディングポジション

取りまわし

セパレートハンドルとはいえ、アップタイプなので、取りまわす時には車体を支えやすい。ただし、車両重量が260kgと重量級のため、その重さをズッシリと感じることになる。

Ninja H2 SX SE 取り回し

メーター視認性

アナログタコメーターはシンプルで、走行中のチラ見でも瞬時に情報を確認しやすい。ただ、液晶パネルの表示は複雑なので、慣れないうちは瞬時には確認しにくい。

ヘッドライト視認性

照射光はLEDらしい白色で、ローとハイともに非常に明るい。照射範囲は前方方向、左右ともに広い。ローとハイの違いは、前方方向の照射範囲で、左右は大きくは変わらない。

ミラー後方視認性

真後ろ方向と左右ともに、広い範囲で確認できる。ただし、パニアケースを装着すると、パニアケースがミラーに映りこみ、視界の一部が欠けてしまう。ミラーのブレはほとんどない。

スペック一覧

車名(通称名) Ninja H2 SX Ninja H2 SX SE
マーケットコード ZX1002AJF ZX1002BJF
型式 2BL-ZXT02A
全長x全幅x全高 2,135mm×775mm×1,205mm 2,135mm×775mm×1,260mm
軸間距離 1,480mm
最低地上高 130mm
シート高 820mm
キャスター/トレール 24.7°/ 103mm
エンジン種類/弁方式 水冷4ストローク並列4気筒/DOHC4バルブ
総排気量 998cm3
内径x行程/圧縮比 76.0mm×55.0mm/11.2:1
最高出力 147kW(200PS)/11,000rpm
最大トルク 137N・m(14.0kgf・m)/9,500rpm
始動方式 セルフスターター
点火方式 バッテリ&コイル(トランジスタ点火)
潤滑方式 ウェットサンプ
エンジンオイル容量 4.7L
燃料供給方式 フューエルインジェクション
トランスミッション形式 常噛6段リターン
クラッチ形式 湿式多板
ギヤ・レシオ 1速 3.076(40/13)
2速 2.470(42/17)
3速 2.045(45/22)
4速 1.727(38/22)
5速 1.523(32/21)
6速 1.347(31/23)
一次減速比/二次減速比 1.480(74/50)/2.444(44/18)
フレーム形式 トレリス
懸架方式 テレスコピック(倒立・インナーチューブ径 43mm)
スイングアーム(ニューユニトラック)
ホイールトラベル 120mm
139mm
タイヤサイズ 120/70 ZR17M/C 58W
190/55 ZR17M/C 75W
ホイールサイズ 17M/C×MT3.50
17M/C×MT6.00
ブレーキ形式 デュアルディスク320mm(外径)
シングルディスク250mm(外径)
ステアリングアングル(左/右) 30°/ 30°
車両重量 256kg 260kg
燃料タンク容量 19L
乗車定員 2名
燃料消費率(km/L) 27.0km/L(国土交通省届出値:60km/h・定地燃費値、2名乗車時)
17.9km/L(WMTCモード値 クラス3-2、1名乗車時)
最小回転半径 3.1m
カラー メタリックカーボングレー×メタリックマットカーボングレー(GY1) エメラルドブレイズドグリーン×メタリックディアブロブラック(GN1)
メーカー希望小売価格 199万8,000円 237万6,000円(税込)
発売予定日 2018年3月1日



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